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取り急ぎ携帯からなんで、そのうち清書します。…たぶん。
つづきからどうぞ
「なんや、また別れたんやって?」
次の講義までの繋ぎ時間、することもなく学食脇の木陰で一服をしていると目の前に見慣れた鞄が湧いて出た。視界を遮ったその男は軽い調子で腰を下ろす。
「…耳が早いな、アリス」
一本くれと、この時間はいつも手を出すのを見越して差し出したソフトケースも珍しく断る仕草に伏せていた視線をあげる。
「耳が早いんとちゃうで。たまたま前に座ってた女子が噂しててん『なぁ聴いた?先週から付き合うとった彼女と別れたらしいで!火村君今フリーなんやって』『きゃぁあん』やと」
声色を変え仕草までも作って再現を試みるアリスに半ば呆れた視線を投げかけると、瞳の奥で悪戯そうな色を見せつつ苦笑する姿が戻ってきた。
「人気もんは辛いよなぁ、火村?」
「ふん。っめんどくせぇ…」
生涯独身主義な訳ではない、が取り立てて家庭の必要性を重視するわけでもない。とはいえ、肉体的に不自由をしている訳でも無く自分の欲を必要以上に抑制するのもナンセンスだと思う。つまりは…言い寄る手間が無いのなら拒む理由など無いという事。
少なくとも、始まりはどうであれ努力を全くしなかった訳でもない。
長続きしないのはあくまでも“スタンス”があまりにも違いすぎて“合わない”というだけの事だと思っていた。思ってはいたが…最近はそれすらも面倒で仕方ないのだ。
果たして無理をしてまでも誰かと共に居る必要があるのだろうか。
人間関係自体が不必要なのでは無い。人間としての生産性を子孫繁栄だけに拘る事も無いだろうと思うのだ。友人は居る。社会性もまあ、ほどほどにある。
ソレだけでいいではないか。
「…解り合えないんだとよ、上等だろ?」
カラカラと意識の隅で誰かが投げた空缶が音を奏でる。
「最近の女子は手厳しいからなぁ、辛辣やな。でも…な」
「ん?」
「そもそも、分かり合えるなんておこがましいと思わへん?分かり合いたいわけやないやろ、きっと…分かって欲しいだけなんやろうと思うよ。分かってくれへんから怒る。それでも“自分の望む様に相手がしてくれん”事に対して憤り…結果“解かり合えない”なんて大それた事を言う」
仰ぎ見る空は雲ひとつない、五月晴れ。
「自分の事すら…よう解らんのになぁ。相手の事まで全部ひっくるめて解ろうなんて…欲張りっちゅうもんや」
そうだ、そうだったな。だから…人はどこまでもいつまでも解り合えない孤独を抱えて闇を抱えて歩いて行くしかないんだろう。誰かと解り合えるなんて…幻想に過ぎない。それでも幻想を追い求め届かない理想に勝手に落胆して人は誰かを傷つけて自分を守ろうとする。
だから―――。
「でも、な…火村。キミは、いやキミかて…独りや、ないよ?」
「…アリ、ス?」
いつのまにか握りしめつつあったラクダをやんわりとした指先が丁寧に解いて、残っている数本から草臥れた一本を抜き出した。たった、一本。細い指がソレを挟んで小さく遊んで見せる。
「俺が居るやん?」
同じく握っていたライターがカチリと焔を灯した煙草を銜え、いつもの様に顔をしかめるアリスの横顔を見つめた。
「…顔をしかめるくらいなら初めから自分で買えよ、アリス」
「え~?火村君ったら冷たいワ。こうして貰うのがええんやん、友達やろ~?」
ソレはほんの些細な肯定。だけれど、確かな…意思の表明。
「そんな風に友達を乱用するなよ、アリス」
「やって、そうやもん。火村、やろ?」
そうやってするりと入りこんでくる、お前の常套手段。
でも、繰り返されるそのセリフに、いつだって、どうしたって。
『連戦連敗』
