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 あわわ…、またしてもサイトアップ間に合わず。
ということで続きなのに…こっちから失礼。


 




見るつもりはなかった。

聴くつもりも無かった。

だが、見てしまったモノは記憶から消す事など出来ないし聴いてしまった言葉は聞かなかった事には出来ない。だからこそ、こうして悶々としているんだから。

直接…訊けばいいんだと思う。

そうだ、今更遠慮などするに値しない腐れ縁にも似た関係ではないか。気になるのなら訊けばいい。だけれど、内容を慮ると元来が強気で接するのが苦手な私にはどうしても…訊けないで居る。

研究室を訪れている時だった。書類片手に電話を受けながら話しをする火村が書きこんだ手元の手帳とその際に漏らした言葉。おそらくはプライベートな用件だったのだろう。府警からの呼び出しでも無く学会からの知らせでも無い。極めて短い会話ではあったがうっすらと口の端に浮かべた微笑みを私は見逃さなかった。もちろん、研究室で受けた手前、態度は慇懃であったし極力発言を控えていた節がある。

その会話の中で。

『…ああ、では来週に…いや、伺いますよ。ええ…』
『楽しみに…ん?ああ、そうですね。では…』

誰かとの約束、なのだろう。予定を確認するように覗きこんだ手帳にそのまま短く何かを書きこんだ火村は電話を切る前、口に滲ませた微笑みを掻き消してしまっていた。

たぶん…私と目が、合ったから。

視線が交差した…その刹那。ほんの少し眉をあげ…そして瞳を伏せた火村はいつもの何の感情も含ませない准教授の顔になっていた。

その変化に戸惑った…のかもしれない。聴き耳を立てていた事を咎められた様な気がして動揺していたのかもしれない。わざと聴いていた訳ではないのだが、誰かとの約束を盗み聴いていた様で…心疾しかったのだろうか。

マグを持っていたので両手がふさがっていた私は足の運びすら覚束なくて…一瞬、ふらりとよろけた。


誓って言える。わざと手元を覗いたのではない。

コーヒーを運ぶ私が近づいたデスクに引っかかってほんの少し零した拍子に「たまたま」見えてしまっただけなのだ。それは来週のページ、白紙に近い手帳に書き込まれた…たった一言一行の予定。

ちらりと目に入った数文字の言葉はまるで写真を撮る様に脳裏に焼き付いてしまったまま、零れた茶色の滴とマグの行方に慌てた私と火村はその話題に触れることなく…。


「あ~、気になる…」

そう、結局訊けないまま…1週間が過ぎて当日を迎え…そして日が変わろうとしているのだ。その間、ずっと悶々としているだけで過ごしてきた。


今頃誰かと何処かで…。

そんな風に思うだけで臆病な私にできる事は他に何も無かったから。

明日、火村と約束をしているのは私だ。でも今日火村が何をしているのか、偶然とはいえ知ってしまった私はいったいどんな顔をしていればいいんだろう。飄々と表情を変えない彼の向こう側に見え隠れする“知りたくなかった事実”を…どんな顔をして受け止めたらいいんだろう。

逢いたくない、このまま時が止まればいいのに。…少なくとも心の整理が出来るまでは。

そう願っているのに先ほどから時計の針は着実にその歩みを進め、暮れていく空は帳を下ろして明日へと繋がっていく。

そう。諦めるしかないのだ。


◆◆◆◆◆


続く>>>よ♪

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